インボイス&電子帳簿保存法|実務で迷うところだけサクッと整理

制度の全体像より「現場で何をどうするか」。
本記事は、請求・経費・領収書まわりで迷いやすい論点に絞って、そのまま運用に落とせる形で整理しました。

A. インボイス制度(適格請求書)で迷う所

1) 請求書に必須の6点(最低限)

  • 発行者の氏名/名称・登録番号(T + 13桁)
  • 取引年月日
  • 取引内容(品目・役務)
  • 税率ごとの対価の額(税抜/税込の別)
  • 適用税率
  • 消費税額(税率ごと)

※参考:
国税庁「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の概要」PDF

2) よくある躓き(ケース別)

3) 受領側の即席チェック(3点)

  • 登録番号があるか(Tから始まる13桁
  • 税率ごとに小計・税額が出ているか
  • 取引日・取引内容・相手先名称が明確か

B. 電子帳簿保存法(電子取引)で迷う所

ポイントは「電子で受け取ったものは電子のまま要件を満たして保存」。紙に打ち出しても要件は満たせません。
電子取引とは・・・取引に関して、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などに相当する電子データを受領又は交付することをいいます。
   *電子帳簿保存法の対象は他に電子帳簿・電子書類、スキャナ保存があります。※参考:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」

1) 電子取引データの保存要件(電子取引)

  • 改ざん防止の措置:タイムスタンプ付与、訂正削除履歴、又は事務処理規程)
  • 可視性:見える(PCで即表示・印刷できる)
  • 検索性日付/金額/相手先で検索できる(日付又は金額の項目について、範囲指定検索ができ、かつ、2以上の記録項目を組み合わせて検索できること)

※参考:国税庁「電子取引データ保存要件チェックシート」

2) 迷い所を運用に落とすコツ

迷いよくあるNG現実的な運用
メール添付のPDF各自のPCにバラバラ保存「請求書_受領_年-月」フォルダに一括集約。ファイル名は「日付_相手先_金額.pdf」。
ECの画面キャプチャスクショだけで保存領収データ(PDF/領収画面)と決済明細を併せて保存。必要に応じメールも添付。
改ざん防止タイムスタンプなしクラウド(Box/Dropbox/Google Drive等)の更新履歴+「事務処理規程」で代替。

3) 最低限のフォルダ設計(例)

/証憑/2025/
  ├─ 請求書_発行/2025-09/
  ├─ 請求書_受領/2025-09/
  ├─ 領収書/2025-09/
  └─ 契約書/(締結年)/
    

検索要件を満たすため、日付_相手先_金額の命名を推奨(例:2025-09-25_IMAS商事_110000.pdf)。

C. 最小運用フロー(30分で雛形導入)

  1. 保管ルール決定:命名規則(例:日付_相手先_金額)、集約フォルダを作る
  2. 受領〜保管の担当:経費は各担当→総務が月1で監査、請求は経理一括
  3. クラウド連携:メール添付→自動転送(ラベル)→クラウド保存
  4. 会計とひも付け:仕訳の添付URL/ファイルで証憑をリンク(freee 等)
  5. 月次監査日付/金額/相手先で抜取検索

配布テンプレ(無料)

  • 〈フォルダ構成&命名規則〉サンプル
  • 〈事務処理規程〉ドラフト(改ざん防止の代替措置)
  • 〈受領チェックリスト〉PDF/メール/スクショ用

ご希望の方は お問い合わせ から「電帳法テンプレ希望」とご連絡ください。

D. 今日から回すチェックリスト

  • 発行側:請求書の様式に「登録番号」「税率別小計/税額」を追加した
  • 受領側:登録番号・税率別小計・税額の3点チェックが習慣化されている
  • クラウドに集約保存(命名:日付_相手先_金額.pdf)
  • 検索要件(日付/金額/相手先)に沿って検索できる
  • 事務処理規程をドラフト化し、運用責任者を定めた
  • 会計の仕訳と証憑がURL/添付でリンクされている

E. よくある質問(実務寄り)

紙でもらった請求書をPDF化して保存すればOK?

紙原本で受領したものは紙保存でOK(スキャナ保存は任意)。ただしメール/PDF受領などの「電子取引」は電子のまま要件対応が必要です。

小規模の外注先が免税業者。どうすれば?

経過措置の期間は一部控除可ですが、将来も見据え契約・単価・役割を見直す方針を決めておくと混乱が減ります。

改ざん防止はタイムスタンプ必須?

必須ではなく、訂正削除履歴+事務処理規程等でも要件を満たせます。まずは運用を回せる形で始めましょう。

※本記事は一般的な運用ヒントです。最終判断は所轄の案内・公表資料に基づきご対応ください。

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