社員旅行を経費にするためには

「金沢1泊」と「鎌倉日帰り」から選べる社員旅行——複数プラン制でも非課税にできる条件

※本記事は執筆時点(令和8年8月)の法令・通達等に基づく一般的な解説です。

選択制の社員旅行、増えています

働き方や価値観の多様化で、「全員で同じ場所へ」という一律型の社員旅行は参加率が上がりにくくなりました。そこで最近増えているのが、複数の旅行プランを用意して、従業員が好きな方を選べる選択制です。

たとえば首都圏の会社が、

  • プランA:金沢への1泊2日旅行
  • プランB:鎌倉への日帰り旅行

を用意し、各自が希望する方に参加する、といった形です。

ここで経営者・経理担当者が気になるのが税務です。「プランを選ばせたら、会社負担分が従業員への給与として課税されるのでは?」——結論から言えば、設計を間違えなければ選択制でも非課税にできます。順に整理します。

大前提——社員旅行が非課税になる2つの条件

会社が費用を負担するレクリエーション旅行は、従業員が受ける経済的利益が少額と認められる場合、給与として課税しなくてよいとされています(所得税基本通達36-30)。実務上の判定基準は次の2つです。

  1. 旅行期間が4泊5日以内であること(海外旅行の場合は、目的地での滞在日数で判定)
  2. 従業員全体の参加割合が50%以上であること

加えて、会社負担額が社会通念上一般的な範囲であることも前提です。金額の明確な線引きはありませんが、豪華すぎる旅行や高額な会社負担は、要件を形式的に満たしても課税リスクが高まります。

複数プランの場合——参加割合は「全体」で判定できる

選択制で悩ましいのは条件2の参加割合です。プランごとに50%を求められたら、2プラン制はほぼ成立しません。

この点、企画全体が一つのレクリエーション旅行といえる場合には、参加割合はプラン合計で判定できると整理されています。業務を止められない部署のために日程を複数回に分けて実施するケースと、基本的に同じ考え方です。

冒頭の例でいえば、プランA(金沢)の参加が全従業員の40%、プランB(鎌倉)の参加が30%なら、合計70%で50%以上をクリア。A・Bいずれの参加者についても、旅行内容・費用が一般的なレクリエーション旅行の範囲内であれば給与課税されません。

ポイントは「全従業員に等しく参加の機会が与えられているか」です。一部の部署や役職者だけが選べる、特定の人だけ豪華プラン、といった設計は「福利厚生」ではなく特定の者への利益供与と見られやすくなります。

「選択制」と「自由旅行」は別物——ここを混同すると課税されます

注意したいのは、選択制が認められるのは会社が企画した複数プランから選ぶ形だからです。

これが「一人あたり○万円まで会社が負担するので、各自好きなところへ旅行してください」という旅行代金の補助になると、話は変わります。従業員が自由に行き先・時期を決められる形は、実質的に金銭を支給したのと同じで、給与として課税されます。

同じ理由で、旅行に参加しない人に代わりに金銭を支給するのもNGです。この場合、不参加者への支給額が給与になるだけでなく、参加者を含めた全員が課税対象になり得ます(不参加者に支給しなければ、参加者への課税はありません)。「行かない人がかわいそうだから現金で」は、善意が最悪の結果を招く典型例なので、制度設計時に必ず避けてください。

参加割合が50%を下回ってしまったら

自由参加にすると、結果的に参加率が50%に届かないこともあります。この場合でも直ちに全額課税となるわけではなく、全従業員に参加資格があり、旅行の目的や会社負担額などから見て通常のレクリエーション旅行と認められるものは、給与課税しなくてよいとされています(国税庁タックスアンサーNo.2603)。

とはいえ、50%以上という形式基準を満たしておくのが最も安全です。選択制の導入はまさに参加率を引き上げる工夫であり、税務上も理にかなった設計といえます。

まとめ——選択制社員旅行の設計チェックリスト

  • 会社が企画する複数プランからの選択制はOK。参加割合はプラン合計で判定
  • 各プランとも4泊5日以内、内容・会社負担額は社会通念の範囲内に
  • 全従業員に等しく参加機会を与える(部署・役職で差をつけない)
  • 「代金補助で自由旅行」は給与課税。企画は必ず会社主導で
  • 不参加者への金銭支給は厳禁(全員課税のリスク)
  • 役員だけの旅行、取引先の接待を兼ねた旅行は、そもそも福利厚生費ではなく役員給与や交際費の問題になります

社員旅行・福利厚生制度は、設計次第で「非課税の福利厚生」にも「源泉徴収漏れの給与」にもなります。当事務所では、規程の整備から金額水準の妥当性まで、税務調査で指摘されない福利厚生の設計をサポートしています。


本記事の内容は一般的な解説であり、個別の税務判断を保証するものではありません。