【9月24日】国税庁の基幹システム「KSK2」移行で、会社の実務はこう変わる
税務署の裏側にあるコンピューターが、今月、20年以上ぶりに入れ替わります。
令和8年9月24日 税務署の事務が「紙」から「データ」に変わります
- これまで
- KSK(国税総合管理システム)
書面を出力し、書面で決裁する事務 - 9月24日から
- KSK2
端末上で処理し、電子で決裁する事務
「役所の内部の話でしょう」と思われるかもしれません。ですが、会社側の手続きにも実害が出る変更が含まれています。
何が変わるのか、ひと言でいうと
国税庁の基幹システム「KSK(国税総合管理システム)」が刷新され、令和8年9月24日から新システム「KSK2」へ移行します。e-Taxもシステム区分上、KSK2に統合されるとされています。
これまで税務署の内部事務は、書面を出力して、書面で決裁する運用が前提でした。KSK2では端末の画面上で事務処理を行い、決裁も電子化されます。あわせて独自の大型コンピューターから一般的でオープンなシステムに刷新され、保守・運用コストの削減も図られるとされています。
要するに、税務署の「手間」が減るということです。これが後述するポイントに効いてきます。
会社側に実害が出る五つの変更点
1 「整理番号」が「お問い合わせ番号」に変わる
税務署から届く文書に記載される番号が、現行の整理番号(8桁)から、お問い合わせ番号(13桁)に変わります。
この番号は納税者ごとではなく、送付される文書1通ごとに付番される点が重要です。「うちの番号」ではなく「その手紙の番号」ですので、問い合わせの際は該当の文書を手元に置いて連絡する必要があります。
2 納付書・所得税徴収高計算書のレイアウトが変わる
複写式の納付書、および所得税徴収高計算書(複写式・日銀OCR用)のレイアウトが変更されます。上記の番号欄が8桁から13桁になるためです。
ただし当分の間は古いレイアウトの用紙も使用可能とされていますので、手元の在庫を捨てる必要はありません。なお、税務署の窓口で交付される所得税徴収高計算書は、複写式からA4用紙に変わります。
3 税務署からの通知が「紙」から「データ」へ
ここが最大の変更点かもしれません。e-Taxで電子交付できる処分通知等の対象が、現在の9通知から約1,000通知へ大幅に拡大します。更正・決定通知書や、是認通知(更正決定等をすべきと認められない旨の通知書)なども対象に含まれます。
これに伴い、電子交付への同意方法が「申請のつど合意」から、原則「事前の一括同意」に変わります。希望する場合は、9月24日以後にe-Tax上で一括同意の手続きを行うことになります(メールアドレス登録とワンタイム認証が必要)。
税理士とe-Tax上で委任関係を登録しておけば、電子交付された通知書を顧問税理士と共有できます。法人はGビズIDを活用して税目ごとに閲覧制限をかけられるよう、検討が進められています。
「国税還付金振込通知書」だけは例外で、従来どおり申告・申請ごとの同意が必要です。
4 申告書の様式が変わり、「控用」がなくなる
一部の書面申告書は、AI-OCRで読み取る前提のレイアウトに変更され、「控用」の様式がなくなります。過去にダウンロードして保管していた様式はそのまま使えない可能性があるため、提出前に最新版かどうかの確認が必要です。
また、申告書等閲覧サービスや情報取得サービスでは、提出年月日が申告書のヘッダーに印字される方式となり、収受日付印の押なつは行われません。金融機関や補助金申請で「収受印のある申告書の控え」を求められることがありますが、今後は電子申告の受信通知(メール詳細)を控えとセットで保存しておく運用に切り替えてください。
5 社長のお名前の漢字が、変わるかもしれません
税務署から送付される文書や納税証明書で使われる漢字が、JIS第1水準から第4水準(JIS X 0213)の範囲に統一されます。このため、一部の漢字は字形が置き換わったり、手書きで表示されたりする場合があります。
| 現行 | 移行後 |
|---|---|
| 﨑 | 崎 |
| 髙(はしごだか) | 高 |
些細に見えますが、相続や不動産登記の場面では、書類ごとの氏名の表記ゆれが確認作業の手間を生みます。納税証明書を金融機関に提出する際なども、事前に一言添えておくと余計な差し戻しを防げます。
私がいちばん注目しているのは、ここです
報道されにくい部分ですが、KSK2ではAI-OCRの導入によってデータで管理される情報量が増え、申告漏れの可能性が高い納税者の判定や、滞納者ごとに接触できる可能性の高い方法の予測といった、AIを活用した事務の高度化が行われるとされています。
さらに、端末画面上の地図に近隣の金融機関を表示する機能や、当局が保有する資料をデータ登録する機能が加わり、調査の効率化が図られます。オンラインツール(Web会議システム)を使った調査も可能になります。
税務署の事務処理コストが下がるということは、裏を返せば、これまで人手の制約で手が回らなかった案件にも、手が届くようになるということです。AIが「確認すべき」と判定した先に、より確実に人員が配置される。そう考えるのが自然でしょう。
特に資産をお持ちのオーナー経営者の方に申し上げたいのは、名義預金、役員貸付金、非上場株式の評価、親族間の不動産取引といった、これまで「数字だけでは見えにくかった論点」ほど、データが蓄積されれば異常値として拾われやすくなるということです。
相続税の税務調査は、亡くなってから1年から2年後にやってきます。今から数年かけて蓄積されるデータが、そのときの調査の材料になります。
今週のうちに確認しておくこと
- 手元の納付書の在庫と、次回の納付予定を確認した
- 電子交付の一括同意を行うかどうか、顧問税理士と方針を決めた
- 「収受印付きの控え」を求められる予定(融資・補助金など)がないか確認した
おわりに
システムの入れ替えそのものは、正直なところ、粛々と対応すれば済む話です。手続きが便利になる面もあります。
ただ、国が、事業者のデータを継続的に蓄積・分析できる体制を整えたという事実は、押さえておくべきだと考えています。どんぶり勘定でも通っていた時代が終わり、日々の処理の正確さが、数年後の税務調査で効いてくる。そういう時代に入りました。
当事務所では、事業承継・相続を控えたオーナー経営者の皆様に、「今の申告が5年後・10年後にどう見られるか」という視点からの体制整備をご支援しています。現状の申告内容にご不安がある方、そろそろ承継を考え始めたという方は、初回のご相談は無料でお受けしていますので、お気軽にお声がけください。

